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代表取締役 小川博和氏
当社はこだわり材料、製法により稲庭うどん、そうめん、半生うどんの製造販売を行っています。創業当時から順調に業績を伸ばしていましたが、近年は人口減少や少子高齢化などのあおりを受け、需要は伸び悩み傾向にあります。
20年ほど前から国内シェア縮小を視野に入れ、海外への販路拡大に積極的に取り組んできました。もともとは国内商社を通して、東南アジア、アメリカ向けに輸出していましたが、商社に一任する方法では、現地の卸先やお客様の評価などを直接知ることができませんでした。そこで、自身の言葉で稲庭うどんが誕生した背景や、製法、調理方法などを説明し、販路開拓したいという気持ちが強まり、現在は直接輸出に力を入れています。
海外で商談するうえで言葉の壁が一番の心配でした。ジェトロを通じての商談会では通訳を手配してもらえましたので、安心して商談に臨むことができました。
商談を進めていく上で苦労したことは、国によって求められる書類や、食品ラベルに印字する栄養成分表示の内容などが異なることです。残留農薬や、日本では必要ない栄養表示も必要になる場合があるため、検査のためのコストや時間がかかります。
また、商談では貿易用語のほか、決済方法やEPAへの対応に関する知識も必要になります。分からないことも多く、その都度、ジェトロ専門家に相談して乗り切りましたが、海外バイヤーとの商談に臨む際に、目を通す手引書のようなものがあればありがたいと感じました。
平成28年度、29年度には県が実施したシンガポール、フランス、ベトナムにおける海外事業に参加しました。実際に海外でのイベントに参加したことで、海外販路開拓に確かな手ごたえを感じました。
令和元年度には県商業貿易課の「海外展開支援事業費補助金」を活用し、県秋田うまいもの販売課が実施した韓国、台湾における展示会、商談会に参加しました。韓国では6月にソウルで開催された「第17回輸入食品展示会」に出展しました。展示会で商談した現地企業の中からインポーターが決定し、取引は現在も継続しています。台湾では8月に輸入食材のPR事業に参加、稲庭うどん本来の食べ方のほか、現地の調味料を使い焼うどん風に調理するなど、現地の趣向に合わせた食べ方を提案し、こちらも好評でした。
また、令和元年度からはジェトロの「新輸出大国コンソーシアム」を活用しており、専門家から輸出に関する様々なアドバイスをいただけるようになりました。それにより海外展開が大きく進展しています。
令和2年度には秋田銀行台北駐在員事務所の支援を受け、台湾を訪問して現地商社および飲食店10社と商談を行いました。単独での海外営業は初めてで成約にたどりつけるか不安でしたが、ジェトロの専門家の協力により、新たにインポーターが決定し、現地の飲食店2店舗との取引が決まりました。商談の進め方や商談後の連絡サポートなど、専門家のアドバイスのお陰だと感じています。
同年度中には県商業貿易課の海外展開支援事業費補助金を活用して、さらに韓国と台湾も訪問する予定でしたが、国内外での新型コロナウイルスの感染が拡大した時期であったため中止しました。
海外渡航が難しい状況になったことから、自社ウェブサイトを英語、中国語、韓国語に翻訳するなど、海外のお客様向けに拡充しました。外国語のウェブサイトは、オンライン商談の際に稲庭うどんの製法や調理の仕方を的確に伝えることにも役立ちました。また、英語のウェブサイトを見たポーランドの会社から直接問い合わせがあり、ジェトロ秋田の協力により、オンライン商談を行いました。
海外販路を拡大していく中で商標登録の必要性も感じるようになりました。あきた企業活性化センターに相談し、中国、韓国、台湾における商標登録を申請しています。
引き続き関係機関の支援施策を積極的に活用しながら、海外展開に注力していきたいと考えています。5年で輸出額を現在の2倍に増加させることを目標とし、雇用の増加などの面で地域貢献に繋げたいと考えています。また、自社単独での輸出手続、販路開拓ができるようになりたいと考えています。
今後も伝統ある稲庭うどんの美味しさを全国・全世界に発信すべく、精進していきます。